北朝鮮外交をしたたかと評する人もいますが、北朝鮮はあるメッセージに対する諸外国の反応を待たずに次のメッセージを発する等明らかにおかしな行動に出て世界中の専門家から何が言いたいのか分からないと指摘された事もありました。したたかと言うよりは、内輪向けの儀式を対外的なメッセージとしても組み立てるという事が出来ないので他国の政府には真意を測りかねるというのが本当の所だと思います。
綱渡りと言われた北京オリンピックの準備期間から上海万博にかけての間、中国政府にとって宗主国様の顔色を伺わずに物騒な実験を繰り返す北朝鮮の存在は頭痛の種だった筈です。中国政府にしてみれば、北朝鮮の党と軍部を束ねる機関が機能しており更に中国側の外交圧力に北朝鮮が正しい反応を返してくれなければたとえ北朝鮮の生命線を握っていても思うようにはコントロールできない訳ですが、残念ながら金正日は必ずしも党や軍部を掌握しておらずその判断も不合理でした。世襲でなく党や軍出身者から成る集団指導体制が実現すれば国家運営にある程度の合理性が担保され、そうなって初めて中国は北朝鮮の手綱の一部を握る事が出来る訳です。
一説によると金正日自身も世襲を望んでいなかったそうですが結局次の指導者も金一族から生まれる事になりました。これは何の根拠も無い単なる想像に過ぎませんが、中国は世襲を認める代わりに金正日ファミリーを丸ごと傀儡にしてしまう事に成功したのではないかと思います。北朝鮮の経済は完全に行き詰っており、またそれとは別に金正日ファミリーは独自に外貨を保有していてこれが尽きると権力の維持が困難になるという問題もあるようです。中国は金正日ファミリーの資金の枯渇を突いて、建前上は権力を維持させる代わりに軍事面では中国の意向に従うよう持ち掛けたのではないかと想像しています。正恩氏が後継に決まった後、中国軍が北朝鮮駐留を再開したのもその流れのような気がします。重油を止めてもなかなか言う事を聞かなかった北朝鮮が指導者一族の資金切れで遂に屈服した。恐らく中国は軍の上層部の懐柔も同時に進めているのでしょう。
アメリカと直接対決する形になる事は避けたい中国にとって、かつては西側との緩衝地帯という消極的な意味合いしか持たずしかも暴発のリスクもあった北朝鮮を密かに傀儡化し前線基地化してしまえば大きな前進になります。数年前まで実は北朝鮮をうまくコントロール出来ていないにも拘らず北朝鮮の宗主国である事を外交面で利用して来た中国は、今後は北朝鮮への支配を強めながら逆に影響力を少なく見せ始めると予想しています。表向きは北朝鮮の暴走に呆れて見せながら北朝鮮を使ってアメリカや日本に軍事的な揺さぶりをかけられれば中国にとって外交手段が広がります。韓国の哨戒艦撃沈には中国は無関係だと思いますが、あの時中国が北朝鮮の肩を持ったのは将来的に同じような事件を自国のツールとして使う可能性が念頭にあったからだと思います。
24日の記事に書いた事と併せて考えると、北も南も人知れず中国に呑み込まれて行くというのが朝鮮半島の未来のような気がします。この予想が正しくないとしても、半島の国家は結局自立できないという点には変わりないと思います。
【関連する記事】