2011年07月16日

安重根の「同志」

Harbin_Station_circa_1940.JPG
 先日の安重根の親筆の話題で前後してしまいましたが安重根の仲間について少し触れたいと思います。その前にこれまで書いたことをまとめておきます。

 安重根はハルビン駅のホームで閲兵する伊藤博文に近付き銃撃しました。

 同時に、ホームを覆う駅舎の2階から構内下方を狙う形で伊藤博文を狙撃した人物がいました。

 カービン銃の狙撃手は閲兵が始まるまで狙撃場所を確保し続け、移動している伊藤博文に安重根の行動に合わせて狙撃を行っています。間違いなく見張り等狙撃手を近くでサポートした人間と連絡係がいた筈です。

 安重根は「愚かなテロリスト」とされますが、現場の実行犯グループだけでも5-6人はいたと思われるこの暗殺計画に関与した人々が全員一様に愚かだったとは思えません。首謀者が、伊藤博文がどういうスタンスの人物か調べもしないで大掛かりなプランを立てたと考えるのも不自然です。要人の暗殺を成功させ、最初から捕まる予定だった安重根以外の全ての部下の逃走を成功させているのだから計画の立案者は極めて優秀な人物です。しかも、狙撃手がいたことは知られていたのに韓国では安重根だけが注目される流れが作られたということは相当な影響力を韓国国内に持つ勢力が背後にいた可能性があります。

 伊藤博文の暗殺を計画したのは、支配者層の中の親日(日本に好意的という意味ではない)派だったと考えています。この時点で日本による半島の支配強化は既定路線であり、それに抗うことは出来ないと知っていた既得権益者の関心事は支配の形態に移っていた筈です。最低ランクの属国の主という身分に甘んじてきた半島の支配者層にとって重要なのは独立などではなく日本からの富の流入であり、日本の軍閥が目指す半島の植民地化とそれに伴うインフラ整備はむしろ望ましいことでした。身分制度崩壊の予感の中で、日本との関係を利用して実業界の支配者に成り替わることを画策していた特権階級の人々にしてみれば、半島への投資に消極的だった伊藤博文が影響力を持ち続けるかどうかは死活問題だったと考えられます。結果的にこの暗殺事件は、愚かな抗日活動家による事件にしてしまうことまで含めて全て彼らの思惑通りに進みました。

 暗殺に赴く安重根を見送ったのは、安重根と志しを同じくする「同志」ではありませんでした。実行犯グループのメンバーが抗日活動家の集団に入り込んで暗殺を持ちかけた可能性もありますが、抗日活動としては矛盾のある計画ですからそうした集団全体を安重根同様に誑かせるとは期待出来なかった筈です。安重根は人物の特殊性から立案者に見出され、暗殺者役として引き抜かれたのだと思います。

 襲撃直前、安重根はハルビン駅の構内が見渡せる喫茶店で待機していたということです(恐らく入り口の左の一角。その向こうに駅舎がホームに沿って左右に伸びている)。ここで実行犯グループは安重根の決意が変わらないことを見届け、彼が出て行くとその背後で2階の仲間に合図を送ったのだと思います。これについて安重根がどう証言しているかは知りませんが、安重根は狙撃手が配置されていることは知っていたと思えます。何かのきっかけで捕まった安重根が騙された・裏切られたと感じると「同志」について語り始める恐れがあります。安重根は「俺達が必ず伊藤を殺すからお前は祖国の英雄になれ」などという言葉を聞かされ、狙撃手を含む実行犯グループが逃走することについては納得した上で表向きの暗殺者役を演じたものと考えています。


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posted by CanUCem at 07:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 伊藤博文暗殺事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月11日

安重根が語る暗殺の動機

【日韓】「日本のために伊藤博文を撃った」…安重根義士の親筆発見
 リンクは笑韓ブログさんです。

 既に書いた通り、安重根以外にもう一人狙撃者がいたとすれば伊藤博文の殺害はかなり大規模な暗殺計画の下に行われたと考えるのが自然です。

 暗殺実行グループのリーダー(あるいは同志を装った部下)が安重根に何を吹き込んだかは分かりませんが、結果から考えてそこには必ず矛盾・破綻があった筈で、安重根はそれを見抜くことが出来ないまま命を捨てることになる任務に赴くと「同志」に読まれていたということになります。安重根は、一定の教養は持っていたものの思慮に欠け自己が希薄な誘導し易い人物だったと考えられます。

 逮捕後安重根は暗殺の理由について様々な説明をしていますが、暗殺によって直接的にはどういう影響が出るのかという考えはスッポリ脱落しています。伊藤博文の暗殺で単純に独立や革命が実現しないのは当然であるばかりか、軍事力で圧倒している国の要人を暗殺すれば祖国や同胞に苛烈な制裁が加えられる可能性がありました。この点だけを見ても安重根は自身の考えの欠落に気付かない人物であったと言えます。半島の支配者層はロシアや中国とはまるで違う日本政府の姿勢に接し、伊藤博文を排除しても日本が直ちに軍事行動に出ることはないと確信していたのだと思います。しかし安重根はそんなことは知る由もないでしょう。暗殺を計画したのは、支配者層の中の親日勢力だったと考えています。だからこそ、事件を辻褄の合わないものにしてまでも抗日活動家の犯行に見せかける必要があったわけです。彼らは仮に日本が制裁に動いても比較的安全な立場にいた・場合によっては有利になる立場であったと考えられます。

 安重根は際立って純粋な人物だったと想像しています。実行グループのリーダーから見ても、良くも悪くも目立つ人材だったのでしょう。安重根と接した日本人は彼の行動を愚かだと考えていた筈ですが、それでも皆一様にと言って良い程安重根という人物に感銘を受けたようです。これは単なる私のイメージであまり根拠はないのですが、安重根はしっかりと自分の考えを持つことが出来ないだけでなく、現実や過去の認識も危うい人だったような気がします。ある種のカリスマ性があり、人を疑うことを知らない騙され易い人物であると同時に、自分自身も悪気はないにしても事実とは異なることを喋ってしまう。精神が薄弱な人には、取調べを受けると相手が喜びそうな方向へどんどん供述を変えて行くケースがあるそうです。安重根にも若干そうした傾向があったのではないかと思います。

 伊藤博文罪悪十五箇条は逮捕後間もなく安重根が書いたものです。この時点で既に日本人にもある程度受け入れられる暗殺理由が書かれていますが、死刑になるかも知れない人間が記したことでもあり逮捕以前にこれと同じ主張をしていたということが確認出来なければこの内容にはあまり意味がないと思えます。この十五箇条が首謀者が事前に安重根に吹き込んだ考えそのものという可能性もなくはありません。しかし、そうだとしても安重根がこの認識の間違いに気付けない人物だという証拠である以外にやはり意味はないでしょう。

 十五箇条を読むと伊藤博文の過去の罪を罰することが暗殺の目的だったと思えます。しかし、リンクの記事にある親筆では韓国・日本・東洋のために将来の災いの元となる人物を取り除いたことになっています。日本人と接している内に我知らず日本人に受け入れられそうなストーリーを考えるようになり、最後には自分でもそれを信じてしまっていたのではないかと思いますが、その想像が当たっているかはともかく内容が次第に日本向けにアレンジされてきているので信憑性が低いのは確かです。ただしこの親筆が新聞で発表されたのは死刑判決後ですから、恐らくは最早何の思惑もなく書き残したものなのでしょう。罪・恨みという発想から妙に未来志向に変わっている辺りが興味深いです。

 安重根が逮捕後に語ったことから思想家として考察が行われることもあるようですが、数ヶ月で内容が変化しているので安重根の主張にはあまり重みがありません。台湾で日本の要人を狙った趙明河と同様に安重根にも経済苦から破れかぶれで活動家となった食い詰め両班という側面があり、最初からそれ程深い思想などなく、他人に操られて伊藤博文の暗殺者を演じ捕まった後でその意義を考え始めたと捉えるほうが正しいと思います。韓国ウォッチをしていると、表面的・刹那的な考えだけで行動して起きた事件に連日のように遭遇します。また、韓国では過去の出来事に加えられる解釈は後付けの美化ばかりです。安重根の言動はこうしたことと全く無関係ではないような気もします。

 前回も書いたことですが、安重根は最初から捕まるように仕組まれており、暗殺の本当の目的も黒幕の存在も知らされていた筈がありません。安重根が獄中で語ったこと・書いたことは、事件前から持っていた誤った考え・あるいは逮捕後に後付けで考えられたことで事件の真相とは無縁です。


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 韓国では多くの日本人観光客犯罪被害に遭っていますが日本では報道されません。被害者が日本人だと分かると韓国の警察は話もきいてくれないケースもあるようです。身近な人が韓国旅行を計画していたら是非警告してあげて下さい。


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2011年05月06日

暗殺事件の規模

Harbin_Station_circa_1940.JPG 
伊藤博文暗殺の目的
の内容に少し付け加えておきます。

 上の記事にも書いたように、安重根は伊藤博文を暗殺すればどういう結果をもたらすかが理解出来ない人物だった為に、こうした一見理不尽な暗殺事件を起こしてしまったと説明される場合が多いです。

 安重根の単独犯であればそれで納得できます。しかし銃撃を行った人物は二人で、しかもかなり離れた場所に居ました。そうなると人間は二人では済まなくなります。連絡・見張り等で最低でももう一人は必要でしょう。現実的に考えれば暗殺現場だけでも四、五人の関係者が居たと思われます。群衆から飛び出して伊藤博文を襲う予定だった安重根は、発砲を開始した途端に取り押さえられて致命傷を与えられない可能性があります。伊藤博文を確実に排除するために用意されたのは駅の二階に潜んでいた狙撃者の方です。閲兵に備えた警備が行われている中、駅舎内に狙撃場所を確保し続ける事が最も重要だった筈ですがこれにも協力者が必要です。式典が執り行われる中での狙撃と安重根による襲撃という見世物が同時に実行されしかも成功した訳ですから、これは大規模で周到に準備された暗殺計画です。

 安重根本人は伊藤博文に関して間違った認識を吹き込まれていた・あるいはある種妄想に近い考えを持っていたとする説があるようです。しかし、複数の暗殺者を使った緻密な計画を立てるような人物であれば対象について正確な情報を集めていないとは考え難いです。日本国内には併合是認・早期独立推進等の意見が有り、誰がどの立場かについて半島の活動家は当然強い関心を持っていた筈です。もし半島に対する伊藤博文の直近の姿勢について首謀者が確信を持てなかったのであれば、不確定要素を抱えたままどちらに転んでも非常に大きな影響が出るであろう暗殺を危険を冒してまで実行に移したりはしなかったでしょう。

 もう一人の狙撃者の存在については昔から知られていたにも関わらず、特に韓国で安重根だけが大きく取り上げられ続けてきた為か日本でも安重根個人の思い違いから生まれた事件と解釈されがちでした。けれどもこれはまず間違いなく相当な数の人間が関わって遂行された計画です。その意図が単なる思い違いによるものだったと言うのは殆ど有り得ない事だと思います。

 安重根の役割は、カービン銃による狙撃音を隠す為に銃声を発し、更に叫び声を上げて注意を引き付け暗殺の本当の目的を知っている人物と繋がっている狙撃者が逃げる時間を稼ぐ事、そして捕まった後で暗殺の背景を撹乱する事だったと考えています。当時は取り調べで拷問が行われる可能性は当然想定していたでしょう。明らかにわざと捕まるように仕組まれた人物は、事件の真相も首謀者についても何も知らされていないと考えるべきだと思います。
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2011年04月24日

伊藤博文暗殺の目的

 抗日活動家の安重根(アン・ジュングン)が何故か併合には消極的だった伊藤博文を襲撃したという、一見理屈に合わない事件です。

 安重根は自分の行動がどういう結果をもたらすのか予想できないテロリストだったと説明される場合が多いようですが、これは日本の管理下での経済的な発展を切望していた朝鮮半島の特権階級が半島への投資には否定的だった伊藤博文を排除したものと考えることができます。結果として、この後日本は巨額の出費を伴う形での韓国併合を進めて行くことになります。

 安重根は伝えられる通り純粋な愛国者で、唆されて暗殺者役を演じさせられただけでしょう。拳銃で伊藤博文を狙った安重根の他に狙撃者が居たのは確かです。この暗殺は併合推進派によって計画され、安重根を使って暗殺の意図を正反対に見せかけるためのカモフラージュを施された事件だと解釈しています。

 併合以前の朝鮮は両班でさえ餓死すると言われる状態で、日本の豊かさを手に入れる事は当時の半島の支配階層にとって悲願でした。しかし、同時に彼らは自分たちには半島を日本のような近代国家へと導く力は無いと悟っていた筈です。経済面では日本の力を借りるだけ借り、豊かになった半島に引き続き支配者として君臨し続ける、というのが彼らにとって最良の筋書きだったに違いありません。

 軍事力の差は圧倒的だったため日本が望めば支配下に入る事自体は避けられません。問題はどういう形で日本に支配されるかです。韓国側は条件を付けられる立場ではありませんでしたが、日本側には旧支配者を駆逐する意思がないという感触は掴んでいたように思えます。そうなると次の関心事は併合後の日本からの支援です。日本は韓国が早期に経済発展を遂げて自立し同盟国となる事を希望していましたが、韓国側の願いは自助努力で発展する事ではなく日本の富を手に入れる事でした。更に当時世界には革命と民主化の潮流があり、長年の経済的困窮と両班の横暴に対する民衆の不満が表面化する恐れもありました。旧支配者にとっては日本軍の駐留でこれを抑え、また支配者に対する不満の矛先を日本に向けておく事が最も安全な道だったのでしょう。

 安重根による派手な襲撃とハルビン駅の二階からの密かな狙撃という二重の暗殺計画が用意された背景には、両班の屈折したメンタリティがあると思います。

 両班については、表面はプライドを重んじているように見えて実は物質的な欲望で汲々としていた人々という印象を持っています。彼らは自分たちの欲望を満たす上で常に建前・口実・儀式を必要とします。暗殺を計画したのがどういう集団なのかは今となっては謎ですが、その集団内部でこうしたメンタリティが共有されていたために民族独立を掲げながら日本からの援助の障害を取り除くという屈折した暗殺劇が仕組まれたと考えています。国内及び日本の反応を考えれば暗殺の真の狙いは絶対に知られてはならなかった筈ですが、単に本当の目的を隠すだけでなく両班の精神が生み出した心理的アリバイが付加されたために矛盾が生じ外国人からすると暗殺者は何も分かっていなかったとしか説明できない事件になってしまいました。自分達の欲求に半島独特の理由付けを行う儀式は韓国・北朝鮮の報道にも見受けられますが、こうした行為は彼らにとっては重要だとしても外国人には理解し難い物です。

 朝鮮半島自体に何の価値も見出していなかった日本政府は明治維新以来自国で行ってきたことを半島でも杓子定規に繰り返し、両班から特権を奪い自らが取って代わろうとすることもなく庶民の地位向上に努めました。両班たちは日本の役人を懐柔すれば併合後も自分たちの身分を維持できると考えていたのだと思います。現在の朝鮮半島においても相手国の少数の政治家・役人を国を挙げて取り囲みコントロールする事が外交工作の中で大きな比重を占めているようですが、恐らく当時の日本の政治家にもこうしたやり方で韓国側に篭絡されていた人間は居たでしょう。しかし、大多数の日本人が持っていたある種の律儀さは両班層にとって大きな誤算でした。

 この時に特権を剥奪された恨みから、また将来の特権回復の下地作りために、両班たち自身がそれまで自国民に対して行ってきた横暴を日本に投影し始めたことが現在に至る朝鮮半島の反日思想の下地になっていると考えられます。
posted by CanUCem at 11:34| Comment(0) | 伊藤博文暗殺事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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