2011年05月12日

北朝鮮の核

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 北朝鮮が、旧ソ連から弾道ミサイルに搭載可能な小型化された核弾頭を手に入れているのではないかと言う話は昔からありました。以前報道され国会でも取り上げられた証言は出処からして正しくないと思いますが、それでもやはり北朝鮮はかなり高い確率でソ連製の核弾頭を入手しており、その上でテポドン等の開発を行っていると考えています。

 アメリカがイラクの大量破壊兵器開発を疑っていた頃、「先生!私の隣の北朝鮮君のほうがテンパった顔してます!!」と声を大にして言いたかったんですが、パウエル国務長官が日本の一小市民の意見を聞き入れてくれるとは思えなかったので黙っていた記憶があります。

 とは言えソ連崩壊のドサクサで手に入れた核弾頭だけでは永続的な国家の防衛には不十分です。北朝鮮は、必ずミサイル開発が先行するようにしながら自前の核開発にも取り組んで来ました。

 北朝鮮の核開発は、小型弾頭化には高度な技術が必要で弾頭製造に踏み切るまでには核実験が必要という各国の思い込みを悪用した囮でもあります。実は核弾頭は既にソ連から入手しており、皆が核開発の方に気を取られている隙にアラスカを越えてサンフランシスコまで到達する弾道ミサイルを完成させればアメリカを直接脅かせるカードが実現するというわけです。

 ただしアメリカ本土に届く核ミサイルを実現しても、これを誇示して体制を保証させる為の交渉材料に使う等と言うことは到底出来ません。イラク戦争が始まりバグダッドの大統領宮殿周辺への爆撃が開始された時に思ったのですが、仮に北朝鮮が数発-数十発の弾頭をソ連から入手しているとしてもこのカードは正にこうした瀬戸際の瞬間に突然切る位にしか使えないでしょう。国家を防衛する為と言うよりは、指導者一族が最後の最後生きるか死ぬかと言う時に自分達の身の安全を保証させる交渉をする為の材料と言ったレベルの物だと考えています。

 自前の核弾頭のほうはもっと本格的な核防衛体制を築くつもりで開発している物と思いますが、先行してミサイルが完成していたとしてもどういう段取りで配備できると考えているのか分かりません。そもそも確実に動作する弾頭が完成する見込みは極めて低い気がします。

 インプロージョン型の核弾頭は部品の加工精度や各部品・素材の均質性が極めて高く要求される筈なので、設計図が入手出来れば実現可能という類の物ではないと思います。北朝鮮がそんな物を本当に作れる気でいるのかずっと不思議だったんですが、これについては最近韓国ウォッチを始めてやっと分かりました。彼らは自分達には実現出来ない事を知らずに取り組んでいます。北朝鮮の兵器開発の話となると我々日本人は反射的に身構えてしまいますが、北も南も自分には出来ない事だと知らずにやってしまう民族の国だと考えれば多少安心していられます。北朝鮮が弾頭を自力で製造するまでには十万回の核実験が必要でしょう。

 旧ソ連製の弾頭の話に戻りますが、弾道ミサイルと言う運搬手段が完成する前に核弾頭を持っている事がアメリカに確認されてしまったら大変なことになります。その瞬間、金正日の脳裡で爆撃されるバグダッドの映像が再生されるでしょう。ソ連製核弾頭の保有は、自前の核ミサイルの開発に関する情報とは比較にならない北朝鮮最大の秘密です。恐らく数十人しかその存在を知らないと思います。

 冒頭に書いた弾頭入手の噂はアエラが報道した北朝鮮からの亡命者・金秀幸氏の証言が元になっているようですが、この金秀幸氏はミサイルの開発・輸出に関わる組織で働いていた貿易担当の責任指導員(課長級)だったそうです。そんなレベルの人が弾頭保有について真実を知っている筈がありません。これは亡命者によるいつもの小遣い稼ぎでしょう。この報道については安全保障委員会でも取り上げられましたがサラッと流されました。北朝鮮製ミサイル輸出のネタ位ならともかく、ソ連製の核弾頭保有の確かな証拠を持った人物に亡命されたら北朝鮮にとって命取りです。

 ソ連崩壊の過程で流出した核弾頭の多くはイランに流れたとされていますが、ある意味イランよりも軍事的にソ連と深い関わりを持つ北朝鮮が弾頭の入手を思い付かない筈がありません。もし入手を思いとどまったとすれば秘密保持の体制に自信が無い場合に限られるでしょう。逆に言うと、北朝鮮が核弾頭を入手したのなら絶対にその秘密は外部に漏れないようになっている筈です。ですから関係国は何の情報も無くても北が小型核弾頭を持っているという前提で振舞う必要があります。一回ポッキリの取引の痕跡を隠すのは大量破壊兵器開発の証拠を隠すより遥かに簡単です。イランがそうしたとされるように北朝鮮も当時のソ連の高官から核を入手したのか、或いはグリーンピースが試みたとされるようにソ連末期に一軍人に取引を持ち掛けたのか分かりませんが、体制の存続に関わる大問題なので絶対に証拠は残さなかったでしょうし、ソ連と直通の特別列車等を用いて誰にも知られずに北朝鮮国内に持ち込む事に成功していると思います。

 金ファミリーはアメリカに体制を潰される事を恐れて核ミサイルを持とうとして来ましたが、朝鮮半島というのは古代から酷く価値の無い場所で、半島その物が目当てで他国が侵略しに来てくれたことは歴史上殆どありません。

 イラクは大量破壊兵器開発疑惑を捏造されて侵攻されたのに、北朝鮮の場合は自分で核開発をアピールしてもアメリカは攻めて来ない。90年代の危機の時はクリントン大統領自身がアーミーキャップ姿で戦車隊の前に立ってポーズ取ったりしてましたが、いかにもやらせんな恥ずかしいという感じでした。対イラク開戦までの雰囲気とはまるで違います。イラクのミサイルは20分でヨーロッパに到達するとその脅威が喧伝されたのに、テポドン2の実験の時は「その程度の完成度では武器輸出で商売するのは無理」「アメリカに届く物が作れても撃墜出来ます」などと冷たくあしらわれてました。

 アメリカが純粋に安全保障上の理由だけで戦争を始める事はまず考えられず、その点北朝鮮と言う国はあまりにも余禄が少な過ぎます。アメリカに本当の軍事的緊張が走るとしたら北朝鮮が完成された小型核弾頭と大陸間弾道ミサイルを揃える時ぐらいで、一方北朝鮮はアメリカが本気で攻めて来そうにならない限りソ連製の弾頭の保有を明かさない筈なので、結局北朝鮮の核弾頭が我々の前に姿を現す事は無いでしょう。

 北朝鮮には、アメリカに潰されるでも韓国に統一されるでもなく密かに中国に飲み込まれて行くと言う未来が待っていると予想しています。

 半島の人々のキャラだけから言ってしまうと、北朝鮮は核にしても弾道ミサイルにしても最もお粗末なレベルの試作品をようやく完成できるかどうかの開発費しか想定していなかったと思います。少ない国家予算で最大の効果を上げるためではなく、根っから見積もりの甘い民族だからです。これまでの何倍もの資金を投入していてもきっとまともな物は作れていなかったでしょう。金ファミリーが中国の飼い犬的存在になったと言うのは単なる想像に過ぎません。ある意味現金で生活しているような部分があるため、実際に資金が枯渇しなくても枯渇する見通しになった所でギブアップするだろうというだけの話です。ただ仮にそういう選択をせざるを得ない所まで追い詰められていたとすると当然核開発の継続は困難になります。中国が外交交渉用の見せかけの核開発や従来より高い水準の核実験に協力することはあっても自前の核の製造を支援するとは思えないので、ただでさえ資金的に無理があった筈の実用に向けた核弾頭の開発は事実上中断すると思います。

 メンテナンスの怪しいソ連製の核弾頭と目的に届くかどうか分からない中距離弾道弾でも、一族の生き残りを賭けた瀬戸際で使うカードにはなります。アメリカから国を守るには少々心許ないですが、金ファミリーにとってはそれなりに満足出来る状況だと思います。問題はむしろ核以外の兵器で、今後北朝鮮が通常戦力を増強する気配があったらそれは金ファミリーではなく中国の支援の下に中国の都合でやらされてるんだなと考える事にしています。
posted by CanUCem at 06:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 北朝鮮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月28日

北朝鮮の今後

 中国が北朝鮮の世襲体制の継続を望まなかったのは北朝鮮の国家運営、特に軍事・外交面で合理性が欠けていると中国にとって非常に都合が悪いからでしょう。

 北朝鮮外交をしたたかと評する人もいますが、北朝鮮はあるメッセージに対する諸外国の反応を待たずに次のメッセージを発する等明らかにおかしな行動に出て世界中の専門家から何が言いたいのか分からないと指摘された事もありました。したたかと言うよりは、内輪向けの儀式を対外的なメッセージとしても組み立てるという事が出来ないので他国の政府には真意を測りかねるというのが本当の所だと思います。

 綱渡りと言われた北京オリンピックの準備期間から上海万博にかけての間、中国政府にとって宗主国様の顔色を伺わずに物騒な実験を繰り返す北朝鮮の存在は頭痛の種だった筈です。中国政府にしてみれば、北朝鮮の党と軍部を束ねる機関が機能しており更に中国側の外交圧力に北朝鮮が正しい反応を返してくれなければたとえ北朝鮮の生命線を握っていても思うようにはコントロールできない訳ですが、残念ながら金正日は必ずしも党や軍部を掌握しておらずその判断も不合理でした。世襲でなく党や軍出身者から成る集団指導体制が実現すれば国家運営にある程度の合理性が担保され、そうなって初めて中国は北朝鮮の手綱の一部を握る事が出来る訳です。

 一説によると金正日自身も世襲を望んでいなかったそうですが結局次の指導者も金一族から生まれる事になりました。これは何の根拠も無い単なる想像に過ぎませんが、中国は世襲を認める代わりに金正日ファミリーを丸ごと傀儡にしてしまう事に成功したのではないかと思います。北朝鮮の経済は完全に行き詰っており、またそれとは別に金正日ファミリーは独自に外貨を保有していてこれが尽きると権力の維持が困難になるという問題もあるようです。中国は金正日ファミリーの資金の枯渇を突いて、建前上は権力を維持させる代わりに軍事面では中国の意向に従うよう持ち掛けたのではないかと想像しています。正恩氏が後継に決まった後、中国軍が北朝鮮駐留を再開したのもその流れのような気がします。重油を止めてもなかなか言う事を聞かなかった北朝鮮が指導者一族の資金切れで遂に屈服した。恐らく中国は軍の上層部の懐柔も同時に進めているのでしょう。

 アメリカと直接対決する形になる事は避けたい中国にとって、かつては西側との緩衝地帯という消極的な意味合いしか持たずしかも暴発のリスクもあった北朝鮮を密かに傀儡化し前線基地化してしまえば大きな前進になります。数年前まで実は北朝鮮をうまくコントロール出来ていないにも拘らず北朝鮮の宗主国である事を外交面で利用して来た中国は、今後は北朝鮮への支配を強めながら逆に影響力を少なく見せ始めると予想しています。表向きは北朝鮮の暴走に呆れて見せながら北朝鮮を使ってアメリカや日本に軍事的な揺さぶりをかけられれば中国にとって外交手段が広がります。韓国の哨戒艦撃沈には中国は無関係だと思いますが、あの時中国が北朝鮮の肩を持ったのは将来的に同じような事件を自国のツールとして使う可能性が念頭にあったからだと思います。

 24日の記事に書いた事と併せて考えると、北も南も人知れず中国に呑み込まれて行くというのが朝鮮半島の未来のような気がします。この予想が正しくないとしても、半島の国家は結局自立できないという点には変わりないと思います。
posted by CanUCem at 07:20| Comment(0) | 北朝鮮 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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